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自宅詳解その2・・・わたくし的「日本木造伝統構法その2」

「伝統構法3大テーマ」

①耐久性+強度を最大限に引き出す日本伝統の職人技

②長寿命で最後は無害で土に還る、再利用が容易

③自然素材の心地よさ

今回は、伝統構法の3大テーマの2つめと3つめについ書いていきます

 

②長寿命で最後は無害で土に還る、再利用が容易 

この住まいは、無垢の木の柱や梁、土でできた壁など、ボルトなどは使わず

いつかは無害で土に還ることのできる自然素材でできています。

また、それらは再利用が容易な材料でもあります。

自宅の材料の比率を調べてみました。構造計算でまず初めにするのが建物の重量を出すことです。構造計算書から、全体の重量は20300Kg、そのうち木と土が16200Kgとなっており重量比で80%が木や土などの土に還る自然素材でできています。

・・・ここで重大な忘れ物に気づきました。基礎が入っていませんでした。この建物は安全性の証明の困難さと時間の関係でコンクリートの基礎になっています。

重量を求めると、なんと25000Kg。基礎まで含めると木や土の重量比は35%しかありません。ざっくりの計算ですが体積比では45%程度になります。

これは、非常に残念な結果としか言いようがない。。。建物の重量を地面が受け止めるには今回のようにベタ基礎状の「面」が、地面に直接石を置く「点」より圧倒的に有利です。地盤の性状の詳細調査検討やそもそも地盤が強くなければ石場建の採用は不可能になってしまします。今後の重要な課題の一つにします。

上部構造

 

 

建物を支えるコンクリートの基礎

昔の民家を調査すると使いまわした木が良く見られます。

前に、茨城の大子町の棟梁に昔の民家はあるもので作ったもんだと言われた記憶があります。先に設計図がある、通り芯から考えって作るもんじゃないと・・・

モジュールのある日本建築であれば、使いまわしも容易なのかもしれません。

 

 

 

③自然素材の心地よさ

香りや手触りが人に落ち着きをもたらすことが、最近は試験方法の進化により生理学的数値により明確になっています

過去の単純なアンケートなどによる心理調査から数段の進化を遂げており、多くの人がエビデンスとして認めるレベルになってきたように思います。

・木に手で触ったときの生理的リラックス効果

左右脳前頭前野活動計測、心拍変動性による副交感・交感神経活動計測で、数値により金属やタイルや石などに比べかなりの効果がある実験結果が得られています。

・木の視覚的リラックス効果

近赤外分光法による脳前頭前野活動と心拍変動性の計測で、スギ有節材・無節材による木質壁画像の視覚刺激がリラックス効果を生む結果を得ています。

・木の香りの鎮静効果

生理指標は、近赤外分光法による脳前頭前野活動を測定することにより、ヒノキのにおいをかいだ際の数値的に鎮静効果が確かめられています。

以下に参考としたホームページを載せておきます。

 

・木の研究の過去から未来について

「20年後の木材産業のために「木材と人の科学」を活かす方策」

www.jstage.jst.go.jp

・いろいろな研究結果

東京材木問屋協同組合

林野庁のホームページ

国立森林総合研究所

https://www.ffpri.affrc.go.jp/pubs/koufu-pro/documents/seikasyu72.pdf

 

 

 

今までお話してきた伝統構法の特徴を写真を中心に再度まとめてみました

  • 石場建(この建物の伝統構法最大の特徴)

    花崗岩に載った柱

    足元周りの雨よけ

・自然石に柱を載せるだけの免震構造

・シロアリや腐朽対策として通風を確保し濡れても早く乾くようにして木の乾燥状態を保つ

・足元周りの雨除けにより、風の強い雨以外は濡らさない

・地面に直接石を置くのではないコンクリートの底版はコストと時間の制約があり採用

・石場建を採用する場合には、限界耐力計算という特別な構造計算が必要

 この点は改めて詳解しようと思います。

 

  • 深い軒先と縁側

    軒先の葡萄のスクリーンと縁側

・奥行約1mの軒

・深い軒が特に外壁と足元を雨や紫外線から守り耐久性アップ

・縁側は軒による雨よけ日よけの半屋外の多目的スペース ・くつろぎの場

・日射の角度 夏至78度 冬至31度で軒により夏は日差しをカットし冬は陽だまりに

 

  • 外壁

    杉の下見板張り

・土壁を雨から守る下見板張り

・外壁も木、劣化保護塗料塗

・焼きスギはコストでできなかった

 

 

  • 檜の柱

    5寸の通し柱

・メインとなる柱は5寸角約15㎝の檜

・ヒノキの優れた点

 檜の強度は杉の約1.2倍、耐久性もい高い、シロアリにも強い 

 加工性に優れる 柱は全て檜とした 

・柱の太さについて(5寸角)

 一般的には3.5寸か4寸105~120㎜角、5寸角は3.5寸の約3倍強い。 

 

  • 木の梁

    大梁梁成(高さ)11寸33センチ

・スギとヒノキの使い分け

 湿気やシロアリの被害を受けやすい1階床を支えるのは檜、

 その他は杉としてコストを抑えた

・できるだけ長物を使い建物の一体化を図る

・真壁、構造表しの清々しい必要最小限なもので構成された空間デザイン

・長さ8mの大梁

 建物長手方向両端をつなぐ長さ8m梁成33㎝の大梁、金輪継ぎにより一体化

  • 継ぎ手仕口

8mの大梁をつなぐ金輪継ぎ

柱に4方向からの梁が接合する四方差し

柱と柱をつなぐ貫1寸幅

柱と梁をつなぐ長ほぞ込み栓
  • 床の杉板40㎜

    1階の杉の床厚さ40㎜

・夏涼しく冬は冷たくない、子供たちは素足で

・断熱性能(熱伝導率)

 杉0.08 檜0.1 合板0.13  コンクリート0.95 アルミ180 グラスウール0.03 

 

  • 木材の適材適所 (構造材以外)

・水に濡れやすいところは栗の木 

 玄関バルコニーに使用、耐久性、耐水性、強度 に優れる

 三内丸山遺跡で出土 製材後も変形しやすく素材の吟味、加工技術が求められる

・タモ 

 硬くて丈夫粘りがある、手すりや家具に使用 バットで有名

 

  • 土壁

土壁厚さ60㎜



・蓄熱性、吸湿性がある

 室温と壁温度を測って蓄熱効果をお見せしたかったが季節外れ^^;

 夜間外気を取り入れて冷やすことで1~2度くらい違う 

 

  • 漆喰

漆喰の壁

 

・耐水性があり汚れにくいため 濡れやすい、触れる場所に使用箇所限定

・不燃材料 吸湿性もある

 

以上、自宅の伝統構法の特徴がわかる部分をピックアップしてみました。

これで 伝統構法詳解は終わりです、次回は「最小限住宅」についてお話ししようと思います。