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伝統構法 自宅詳解その6・・・適正な規模の考察その1

                                                  【現代の住宅事情】

少し古いアメリカのデータですが、国立住宅建設協会2004年のアメリカの平均的な住宅の広さは216.5㎡で1970年の130㎡に対し86.5㎡も広くなっています

国交省のデータによれば日本では、昭和43年81㎡ウサギ小屋論の影響か、平成30年に101㎡で20㎡ほど広くなっています。また、空き家率は5%から14%に増加しています。

世界の住宅の面積は、持ち家では元データに辿れていませんが欧米との比較に限れば日本が最小だが、10~20%程度の差で大きく違わない、大きく日本の平均の居住面積を下げているのは、貸家というネット情報もあります。

日本では一人暮らし、ワンルームが多い、広くても古い住まいが有効に使われてないと思われます。

 

 

【民族のオリジナル住居】・・・近代以前の世界の人々の住まい

 

 鹿島出版「 SD選書住まいの原型」他より

 

一人当たりのスペースは、2㎡~18㎡、平均7㎡程度。基本的に水回りはありません。

水回りは外部空間にあります。

また、家族形態として核家族がほとんどで、半分はワンルーム、その他も2室程度の小室なすまいとなっていて、多目的な室利用をしています。トイレ、調理、体を清める?や生殖行為も外部にて行われる例が多く、外部を含めて現代の住まいの機能が成立しています。また飼育スペースを持ったものが多いのもプリミティブな住居の特徴です

 

【近代+αの最小限住宅】 スペースの分析と目指したもの

 

・ヒヤシンスハウス(2004年11月6日、立原道造構想1938)

「僕は、窓がひとつ欲しい。

あまり大きくてはいけない。そして外に鎧戸、内にレースのカーテンを持つてゐなくてはいけない、ガラスは美しい磨きで外の景色がすこしでも歪んではいけない。窓台は大きい方がいいだらう。窓台の上には花などを飾る、花は何でもいい、リンダウやナデシコやアザミなど紫の花ならばなほいい。

そしてその窓は大きな湖水に向いてひらいてゐる。湖水のほとりにはポプラがある。お腹の赤い白いボオトには少年少女がのつてゐる。湖の水の色は、頭の上の空の色よりすこし青の強い色だ、そして雲は白いやはらかな鞠のやうな雲がながれてゐる、その雲ははつきりした輪廓がいくらか空の青に溶けこんでゐる。

 僕は室内にゐて、栗の木でつくつた凭れの高い椅子に座つてうつらうつらと睡つてゐる。タぐれが来るまで、夜が来るまで、一日、なにもしないで。

僕は、窓が欲しい。たつたひとつ。……」(立原道造)

詩人で建築家だった立原道造の1938年の構想を60年を経て2004年に実現したもの。

外形寸法:幅2丈約6m × 奥行 8尺約2.4m 約9帖14.4㎡、一人用なので一人当たり14.4㎡

ワンルーム形式で、トイレはあるがキッチンとお風呂はありません。

別所沼公園に佇んでいます。コーナー窓からの公園の眺めが素晴らしい。

 

 

 

・カップマルタン(コルビジェ 1952年)

コルビュジエ64歳、南仏出身の妻イヴォンヌのために、南仏の保養地コート・ダジュールにほど近い片田舎カップマルタンに小さな休暇小屋を作りました

外形寸法:幅 3.66 m × 奥行 3.66 m × 高さ 2.26 m約8帖13㎡、一人当たり6.5㎡

ワンルーム形式で夫婦2人暮らしの想定、トイレ 洗面、食卓はあるがキッチンとお風呂ありません。色々な寸法が最小限で作られています。

玄関に入った瞬間、一人通るのがやっと狭い・低いと感じると思いますが、玄関からワンルームの約6帖のリビング?のテーブルに腰かけて外を眺めるうちこれでも十分ではと思えてきます。テーブル横の壁に穿たれた小ぶりの窓からは本物は海が見えるのですが、ものつくり大学の精緻なレプリカでは川が見えます・・・たしか。小さな住まいで暮らすには外といかにつながるかがとても重要です。

茶室のような閉じた空間は、宮尾登美子じゃないけれど、たまには穴ぐらみたいな場所に引きこもりたくなる需要に応えたもので、そんなもんは住まいではありません。茶室は自立空間ではないですね。

 

 

 

・最小限住宅(増沢洵1952年)

日本の戦後の住宅難の復興期に作られた新たな民主主義世界を目指した先鋭的な住宅。4人家族で公庫の面積規制により50㎡でした。一人当たり12.5㎡となっています。

2階建てで建築面積は9坪1辺3間約5.4m。正方形の極めてシンプルな形態。

トイレ、キッチン、お風呂はあります!

吹き抜けによる空間の一体化と南面の大開口が特徴的。約200坪の大敷地に立っています。

広大な庭と一体となった小住宅でした。

 

 

・方丈庵(鴨長明 鎌倉時代1212年)

一辺1丈約3mの正方形、約9㎡に一人、トイレやお風呂はありませんよ。調理は軒下?

寝床は独立しています。

正確な場所は色々な説がありますが、京都市伏見区の日野山の山中にあり、自然に囲まれた静寂な環境でした。まさに、「自然と共に暮らす」を体現していました。

 

 

4つのデータからの推測、現代の課題

 

一人当たりのスペースは、7㎡~14㎡。ただしお風呂やキッチンがあったりなかったりです。トイレ・お風呂・キッチンを想定すると10㎡~19㎡、平均15㎡程度といったところです

共通しているのは、狭い内部空間を感じさせない広大ともいえる外部空間とのつながり、これが現代の密集した都市では困難です、都市構造の変革が必要なほど大きなテーマになりそうです。