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「新築の石場建」住宅のシロアリ対策*石場建はシロアリに食べられても修復が簡単 2022.02.06に大幅追記しました

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柱の底の部分に吸水を抑えるため塗料を塗っています。

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 構造を支える柱の上に「ひさし」を設置し、雨でぬれて木材が腐敗することを予防しています。

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最悪、足元が腐ったり、シロアリに食べられたとしても、朽ちた部分を切り取って、別の木を噛ませことで簡単に修復できます。

 

詳しくは下記のような対策をしています。

【石場建の弱点対策】

石場建で気がかりなのは、足元周りが雨で濡れて木が腐りやすくなることや、湿った木を好物にするヤマトシロアリ(関東では最も一般的な種類)の被害です。

木が腐るのも、ヤマトシロアリに食べられるのも乾燥した木ではほとんど起こりません、一定の湿り気が不可欠です。

※シロアリについては別にページを設けました。(作成中です)

そちらもご覧ください。

 

《対策》

その1:雨に濡れにくくする。ただし横殴りの雨など完全に濡れないようにするのは難しいです

⇒今回の建物では、南側は軒を深くすることと縁側などで雨を防いでいます。残りの3面はそれらに期待できないので3周の足元まわりには小庇をまわしました。

 

その2:濡れても乾きやすい工夫。足元周りの風通しを良くし乾燥しやすい状態をつくること。石場建はその点、縁の下があって空気が通り抜けやすく湿気が溜まりにくい造りになっています。

⇒今回の建物では、足元周りを塞ぐことのないようにしてあります。加えて、雨で跳ね返った土などがあると湿気が溜まりやすくなります。そのため足元周りは、玉石や植物によるグランドカバーで、土の露出を防いでいます。

 

その3:木が水を吸いにくくする。木材の水の吸収率は、木口(こぐちと読みます)といって年輪が見える断面からが圧倒的に多いです。もともと植物が水を運ぶ導管がむき出しになっているためです。この木口面の導管の穴をふさいで水を吸いにくくするなどの工夫が必要です。

⇒今回の建物では、木口に安全性の高い塗料を塗ることで水の吸収を抑えています。

※コストの関係で化学塗料を使用しています

 

その4:腐りにくい、シロアリに強い材料をつかう。ヒノキ、栗など耐久性の高い木を使う。また、それらの木でも耐久性の高い心材部分を使用する必要があります。

⇒今回の建物では、柱は全てヒノキの心材にしています。

 

その5:メンテナンスに優れた造りとする。まずは、何か不具合がないか見つけやすいように足元周りが日常的に見ることができるよう「見える化」することが必要です。

早期発見により被害を最小限に抑えることができます。多少の蟻害であれば薬剤等による対応、被害が大きければその部分を切り取って木を継ぐことになりますが石場建であればそれが可能です。

 

その6:防腐・防蟻材の塗布。環境への影響を考えると慎重に検討する必要があります。

実験のデータ等を元に安全性のレベルを確認しつつ最小限の使用に抑えるべきです

今回の建物では、雨の影響の大きい外周の足元に防蟻材を塗布しました。

 

以上6点に配慮することで、かなりの耐久性を獲得で来ると思います。足元がダメになったら家が建つことすらできなくなりますから・・・最重要課題ですね。