前回はシロアリの生態を中心に書きましたが、今回はシロアリの被害の条件について書いてみます。
まずは、被害の実態調査から・・・
今回も、日本しろあり対策協会の「シロアリ及び腐朽防除施工の基礎知識」を参考にまとめました。
1995年1月に起こった阪神大震災の被害状況について、日本建築学会の調査によれば神戸市東灘区では、倒壊した住宅の80%以上がシロアリ・腐朽による被害を受けており、それらの被害を受けていなかった住宅の被害率は40%未満だったとあります。
また、定量的調査はされていませんが、森拓郎氏らの調査において2011年東北大震災・2016年熊本地震においても地震により損壊した住宅の多くでシロアリ・腐朽による被害が観察されているとあります。
以上からも、シロアリ・腐朽による被害が地震時による人命の被害に直結する問題であることが確かであると言えます。
また、2001年に日本しろあり対策協会による全国平均の被害率は34%(地域による格差大きい)、築年数で見ると~10年で19%、10~20年で35%、20年~で49%、となっています。また、同関東支部が行った2002~2005年の床下の実態調査では、53%の被害が発生したとあります。(今後詳細原典確認予定、調査次第追記します)
https://www.hakutaikyo.or.jp/shuppan/library
これは、シロアリ素人の私たちにとって驚くべき数字ではないでしょうか?
地震時の被害とシロアリの食害率を考えればシロアリと腐朽対策は必須といえます。
シロアリの生態や木材の腐朽の仕組みを前回まで見てきましたが、いずれも水分が非常に重要であり、濡れにくく、乾きやすい建物にしなければなりません。
木材腐朽の条件は前回見てきたので、今回はシロアリの食害の条件を考えてみたいと思います。
現在休刊中ですが日経ホームビルダー(雑誌)を参考にしました。興味ある方は、図書館等で探してみてください。2020年3月号「続出想定外のシロアリ被害」と同年6月号「ヒノキ神話は本当か?」の2冊です。なかなか刺激的なタイトルですね。
「続出想定外のシロアリ被害」では住宅の基礎の主流が布基礎からベタ基礎に変わって、地面から切り離され、被害が無くなると思われていたが、少なからぬ被害が発生していること、最新のシロアリ対策がケミカルフリー化を目指していることについて書かれています。
ベタ基礎に立つ石場建はこの記事から推測するに安全性が高いといえると思います。
続いて「ヒノキ神話は本当か?」ですが、結論はヒノキも食害に合うとことが、ショッキングな写真とともに紹介されています。
これは伝統構法においても、重要な問題なのでもう少し詳しく紹介します。
まずは、2020年3月号「続出想定外のシロアリ被害から」・・・基礎の話。
近年住宅の基礎は布基礎からベタ基礎に変わっきてシロアリの被害を受ける木材が土に近接することが無くなってきたにもかかわらず、被害が発生しています。ベタ基礎は国が防蟻対策として認めたものです。シロアリの侵入経路としては、注意が至らず土に木が接してしまった部分や、施工時にできるコンクリートのわずかな隙間や設備の配管等で基礎にあけた穴の隙間などです。0.6㎜あればヤマトシロアリは侵入可能だそうです。
そしてもう一つが、基礎断熱、特に外張り断熱だと断熱材が土に接しているため侵入経路となりやすい、また断熱材の内部が経路なので発見が難しいことも問題だそうです。
これらの被害から見えてくるシロアリの生態・シロアリの好む条件とは・・・
①浴室などの水回り:湿度が高く暖かい場所
②柔らかいもの:断熱材などかじることが容易なもの
③隙間:身を隠して体表の水分が保てる場所
④静かな環境:振動や騒音が少ない場所
となっていて、その裏返しとして
シロアリの嫌う条件として
①気流と広い空間:体表の乾燥を嫌う
②明るい場所:天敵に見つかりやすい
③騒々しい環境:振動・騒音が多い場所
が挙げられています。
通気性に優れた石場建の足元周りは①の条件に合致しており、シロアリの被害を受けにくいと思われます。
次に6月号「ヒノキ神話は本当か?」について・・・
ヒノキは日本の木造建築を語る上で最重要と言っても良い木です。
そのヒノキも条件がそろうとシロアリにやられてしまうという事例・実験結果が掲載されています。事例としては、浴室周りのヒノキが辺材(木の外側柔らかい部分)だけでなく心材の一部も被害を受けています。
実験では、ヒバ、ヒノキ、スギ、マツを試験体としています。
1か月の結果は、スギ、ヒバ、ヒノキ、マツの順で被害が軽微でした、スギが一番被害が少なかったのは実験者も想定外、ヒノキは蟻道が発達し一部に食害も見られました。
ヒノキって実はシロアリに弱いのか?と思えてしまう結果ではありますが、実験の詳細を読むと理解の範囲内です。まず、試験体が辺材であること、シロアリの生態に即した温度湿度を保っていることからある程度の被害は想定通りとも言えます。
【結 論】
日経ホームビルダーの2つの記事からも分かることは、シロアリが乾燥に弱く、木材が仮に濡れても乾きやすい、通気性の良い状態にあれば被害の可能性は非常に少ないといえるのではないでしょうか。シロアリの生態を踏まえ適切な作り方を心がけることが大切です。
石場建の耐久性の実態確認のため、古民家の足元周りの調査も予定しています。
調査完了しましたらここで報告させていただきます、ご拝読いただければ幸いです!
ではまた・・